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#19 「アジアを代表する会社をつくる」コロナ禍からの急成長、藤田ファンドからの資金調達の舞台裏 - ヒュープロ 山本玲奈氏

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「スタートアップ オフレコ対談」は、XTech Venturesの代表手嶋とゲストの方をお呼びして対談する番組です。今回は2015年に設立し、士業や管理部門に特化したキャリア支援プラットフォーム「HUPRO」を展開する株式会社ヒュープロ代表取締役の山本玲奈氏をお迎えします。

後編では、資金を投下しても事業が伸び悩んでいた中で藤田ファンドからの資金調達と事業の急成長、「アジアを代表する会社をつくる」というビジョンを社内に浸透させるための仕組み作りについて深堀りさせていただいています。

スピーカー

・山本玲奈氏(@shirahureyy)
株式会社ヒュープロ代表取締役

・手嶋 浩己(@tessy11)
XTech Ventures代表パートナー

※記事の内容は2022年2月時点のものです。

目次

・ヒュープロとの出会いと投資の経緯
・コロナ禍からの再起と急成長
・藤田ファンドからの資金調達の裏側
・アジアを代表する会社をつくるという最終目標
・「ロールモデルになる」女性経営者としての想い

ヒュープロとの出会いと投資の経緯

手嶋: 後半は、ヒュープロ創業後のお話を中心に伺いたいと思います。前半では、山本さんのこれまでのご経歴やヒュープロの事業が始まるまでの経緯をお話しいただきました。

私と山本さんが初めてお会いしたのは、ちょうどヒュープロが始まった頃だったかと思います。私が前職のユナイテッドを退職することが公になり、少し時間ができた際にTwitterで「時間があるので、どなたかお話ししませんか?」と投稿したところ、連絡をくださった一人でした。山本さんは、現在の士業・管理部門向けの転職エージェント事業に舵を切ってから、半年ほど経過した時期だったと記憶しています。

山本: はい、おっしゃる通りです。その事業で突き進もうと決意した時期でした。

手嶋: その頃、山本さんは資金調達を検討されていましたが、私はまだファンドを立ち上げる前でしたので、VCとしてではなく純粋にお話を伺いました。前半で伺ったような衝撃的なエピソードの数々に、非常に面白い方だという印象が強く残っています。

その後、私がファンドを立ち上げ、ご検討の末、ヒュープロは当ファンドにとって2社目か3社目の投資先となりました。それ以来、伴走させていただいていますが、正直なところ、2018年から2020年頃までは厳しい時期でしたね。

山本: はい、非常に厳しい時期でした。

手嶋: 2018年から2020年にかけてのヒュープロを一言で言うと、私たちが投資を実行し、急成長の計画を伺っていたにもかかわらず、実際には約2年間、業績が横ばいの状態でした。

山本: 面白いほど全く伸びませんでした。

手嶋: 今振り返って、その期間には何があったのでしょうか。立派なオフィスに移転された時期でもありましたね。

山本: XTech Venturesさんから出資を受けることを決める数ヶ月前は、月次売上が倍々で伸びていた時期でした。

手嶋: まさに資金調達に最適な、最も勢いのあるタイミングですね。

山本: 売上の伸び率が最も高く、そのタイミングで投資家の皆様とお話し始めたので、私たち自身も根拠のない自信に満ち溢れていました。利益率も非常に高く、広告をほとんど使わず、口コミだけでお客様に喜んでいただけていました。

自分たちが直接会わなくても、税理士や社労士、経理といった方々の転職支援ができていたため、手応えを感じており、非常に意気込んでいました。

しかし、これが大きな落とし穴でした。私を含め、創業メンバー3人は全員が現場の最前線に立っていました。そのため、事業の成功が、自分たちが描いていたプロダクトの力ではなく、個々の属人的な営業力に大きく依存していることに全く気づいていなかったのです。広告費がなぜ低いのかという分析もしておらず、「ユーザーのほとんどが口コミ経由だから利益率が高い」という表面的な理解に留まっていました。「資金を調達して広告をかければ、さらに大きく伸びるはずだ」という安易な計画を立てていたのです。

手嶋: 右肩上がりの成長は間違いない、と。

山本: はい。「ユーザー数が伸びているのだから、広告費を投下すればもっと増えるだろう」と考えていました。資金調達をすれば事業が伸び、人も増えるだろうと見越して、調達と同時にオフィスの契約も済ませました。

そして、資金調達が完了した翌月、計画通り広告費を以前の7〜8倍に増やしました。

手嶋: 予定通り、一気にアクセルを踏んだわけですね。

山本: しかし、広告費を投下した結果、売上は一時的にゼロまで落ち込みました。ユーザー数は確かに急増しましたが、当時のメンバーはわずか3人。急増したユーザーに全く対応しきれなかったのです。

私たちのサービスの強みは、多忙な士業の方々が登録しやすい夜19時から21時のゴールデンタイムに「即座に返信し、情報を提供する」という迅速な対応でした。しかし、ユーザーが想定をはるかに超えて増加したため、電話対応が終わるのが深夜24時を過ぎるような状況が続きました。

コロナ禍からの再起と急成長

山本: ユーザー対応に追われ、深夜まで電話をしても、翌日もまた売上に繋がらない業務に一日が費やされていきました。顧客の新規開拓もままならず、自分たちのキャパシティを超えた対応に忙殺されるうちに、気づけば1ヶ月が経っていました。

売上が上がらない原因を分析する時間も、立ち止まって考える余裕もなく、チームの雰囲気は次第に殺伐としていきました。お互いに会話はするものの、本音で話すことはありませんでした。ただ忙しく、手が回らない状況から「人を増やせば売上が上がるのではないか」という安易な考えで数名を採用しましたが、それでも売上は一向に上がりませんでした。

にもかかわらず、会議では「来週からうまくいく」「来月からきっと大丈夫だ」といった希望的観測ばかりが繰り返され、あっという間に半年が過ぎていきました。

次第に関係性も悪化していきましたが、皆が優しいメンバーだったため、誰も本音を口にしませんでした。私も含め、全員が不満を抱えながらも何も言えず、雰囲気は悪いまま事業は伸び悩み、全員が疲弊しきっていました。それでも「なんとかなる」と言い続けましたが、状況は好転せず、組織の歯車が狂っていくのを感じていました。私自身、メンバーが何のために頑張っているのか分からなくなり、彼らに何を伝えれば良いのかも見失っていました。

そしてついに、創業時からの中心メンバーが「辞めます」と切り出し、組織は崩壊。社員のほとんどが退職してしまいました。

手嶋: これが2回目の組織崩壊でしたね。

山本: はい、その通りです。

手嶋: しかし、物語が面白くなるのはここからです。ほとんどの社員が辞めた後、何をされたのですか?

山本: 正確な人数は記憶していませんが、最終的に残ったのはわずか4名でした。最大40人が入れるオフィスに、たった4人。そのメンバーは、私、入社したばかりのエンジニア、営業から異動したばかりのマーケティング未経験者、そして新卒入社の若手でした。

手嶋: まるで映画のような展開ですね。その時期は、業績は横ばいどころか、むしろ下降していたかもしれません。売上が時折急上昇することはあっても、全体としては低迷し、会社の資金は着実に減っていきました。

そのような危機的状況から、2020年から2021年にかけて、外部の人間が驚くほどの急成長を遂げました。

山本: はい、鳴かず飛ばずの状態から、いわば「がんばれベアーズ」のようなチームが残ったわけです。

手嶋: そのチームで、どのようにして現在の成功に至ったのですか?

山本: 結論から言うと、あの時の極限状況が、結果的に最高の転機となりました。新型コロナウイルスの影響で、初めて強制的に在宅勤務になったのです。関係構築もままならない5人での在宅勤務は非常に困難でしたが、全員が一致して思ったのは「やるしかない」ということでした。誰一人として「辞めたい」と言う者はおらず、皆が前を向いていました。

事業モデル上、営業は最低3名必要だったため、私が営業の現場に復帰し、残りのメンバーもそれぞれの持ち場で奮闘しました。マーケティング担当には「自分で勉強してついてきてほしい」、エンジニアには「独力でエンジニア組織を再建してほしい」と伝え、全員が自分の陣地を守るべく、がむしゃらに働きました。

会社のキャッシュが2ヶ月で尽きるという状況下で、半年ほど無我夢中で走り続けました。しかし、このままではいけないという危機感もありました。

ユーザーが求めることと、企業が求めることの間にズレが生じていると感じ、「これはSNSの創業者に話を聞くべきだ」と考えました。事業モデルに共通点があると感じていたからです。その創業者の方から多くのヒントをいただき、それを全て実行に移しました。

特に重要だと感じたのは組織づくりです。社風を変え、採用方針を見直し、オペレーションを根本から再構築することで、2020年の秋頃から徐々に数字が上向き始めました。3ヶ月間の種まきの期間を経て、2021年1月から売上は急激に伸び始め、そこから現在まで成長を続けています。

手嶋: 低空飛行を続けていた頃と比較すると、月次売上はわずか1年で数十倍にまで成長しました。ウェブサービスのトラフィック増加とは異なり、人材エージェント事業でのこの伸びは驚異的です。そこから約1年半で、組織も40人規模にまで拡大しましたね。

山本: はい、現在40名体制です。

藤田ファンドからの資金調達の裏側

手嶋: その再起の過程で、資金が尽きかけ、私たちのファンドだけでは支えきれないという状況になりました。山本さんと月次ミーティングを行う中で、「藤田さん(サイバーエージェントの藤田晋氏)に会いに行ってきます」という言葉が出たときは驚きました。当時のヒュープロの状況では、通常のVCからの資金調達は困難だと話していた矢先のことでした。

しかし山本さんは藤田さんに直接お願いしに行き、結果的に、コロナ禍で売上が2年間横ばいだったにもかかわらず、私たちが投資した際の数倍のバリュエーションで、藤田ファンドから2億円の資金調達に成功しました。これは、今のヒュープロにとって大成功の投資であり、当時、他のVCでは絶対に不可能だった決断だと思います。

山本: 藤田さんには、藤田ファンドが設立される1年前からアプローチしていました。「藤田さんが出没する」という噂を聞きつけては、あらゆる場所に足を運びました。

また、サイバーエージェント創業当初のブログまで遡って全て読み込み、藤田さんの投資哲学を研究しました。

藤田さんは「『投資してください』と直接言ってくる起業家よりも、何も言わない起業家の方がいい」と公言されていたので、その言葉通り「投資してください」とは決して言わず、まずは顔と名前を覚えてもらうことに徹しました。セミナーなどのイベントに参加しては、名刺交換をさせていただく、という地道な活動を続けていました。

手嶋: イベントで一方的に会いに行っていたのですね。しかし、単なるファンだった状態から、どうやって2億円の出資を引き出したのですか?その間には大きな隔たりがあるように感じます。

山本: 他のVCからは全く相手にされなかったため、初めて藤田さんに「事業の話を聞いてください」と直接メールを送りました。すると「藤田ファンドは今、凍結しているんだ」という返信をいただきました。

手嶋: 覚えていてくださったのですね。

山本: きっとそうだと思います。藤田さんは著書の中で、ベンチャー投資の意義について語られていたので、無下にはされないだろうという確信がありました。

その後、「では、サイバーエージェントの子会社から出資する方向で担当者を紹介しようか」とご提案いただいたのですが、「担当者の方には存じ上げている方もおりますので、また藤田ファンドが再開された際に改めてご連絡させてください」とお断りしました。すると、その姿勢を「そういうところ、いいね」と評価していただけたのです。

その1ヶ月後、本当に藤田ファンドが立ち上がり、その設立イベントに呼んでいただきました。その場で初めて1対1でお話しする機会を得ましたが、事業の話は一切せず、関係構築に徹しました。他の起業家が必死に事業プレゼンをする中で、逆張りすることが差別化に繋がると考えたのです。

それから1年後、「準備が整いましたので、改めてご挨拶に伺わせてください」と連絡し、投資が決定しました。 今だから話せる裏話ですが、実際には全く準備は整っておらず、売上は横ばい、組織は崩壊し、「がんばれベアーズ」チームだけが残ったコロナ禍の最も厳しい時期でした。

手嶋そのタイミングで「受け入れる準備ができました」と連絡して、投資が決まった。この成功の要因は、やはりそのプロセス全体にあったのでしょうか。

山本: 長い時間をかけてアプローチを続けたことが、粘り強さの証明になったのだと思います。一度のプレゼンに賭けるのではなく、時間をかけて自分という人間を覚えていただく。その努力が実を結んだのだと考えています。

手嶋: その2億円の資金と、我々の追加投資を元手に、結果としてその資金に大きく頼ることなく、自力で急成長を遂げられましたね。

山本: はい。私たちの事業は堅実なので、売上が上がればキャッシュフローも安定します。

アジアを代表する会社をつくるという最終目標

手嶋: 現在、40人規模の組織で急成長を遂げているわけですが、今後の事業方針や経営方針はどのようにお考えですか?

山本: 私たちの最終目標は「アジアを代表する会社をつくり、その会社が日本を世界一にする」ことです。そのために、50以上の事業を創出し、1.5兆円規模の企業グループを目指します。その第一歩として、まずは経営管理の領域で日本のプラットフォームを構築し、この分野で世界一になることを目指しています。

手嶋: 「アジアを代表する会社」という壮大なビジョンを掲げ、その実現に向けた第一歩として、現在は経営管理プラットフォームにおける人材事業に取り組んでいる、という位置づけですね。

ただ、事業規模が大きくなるにつれて、社内のメンバーとの間にギャップは生まれませんか?「アジアを代表する」という壮大なビジョンと、目の前の人材営業という業務との間で、「私たちの会社は一体何を目指しているのだろう?」という疑問が生じることはないでしょうか。

山本: そのギャップは当然生まれると考えています。そのため、2つのことを大切にしています。

ひとつは、日常の組織編成や仕組みを通して、メンバーに「今やっていることがビジョン達成に繋がっている」と実感してもらうことです。例えば、意図的に変化のスピードを速め、多くのマネージャーを育成する仕組みを作ることで、「会社は事業を創れる人材を育てようとしているんだ」と制度レベルで理解を促しています。

もうひとつは、ビジョンを語り続けることです。これはサイバーエージェントのやり方を参考にしているのですが、月に一度、1時間半ほどの時間をかけて私がビジョンについて話す会を設けています。これが非常に効果的です。

手嶋: その月一の会では、具体的にどのようなお話をされるのですか?

山本: 現在の事業の進捗状況に加え、20年後という壮大なマイルストーンを分解し、「人類最強化計画」と名付けた人材育成プランについて話したり、時間軸を区切って「15年後、この会社はどうなっているか」といった未来像を具体的に語ったりしています。

手嶋: 今後の具体的な事業展開について、例えば3年後はどのような状態をイメージされていますか?

山本: 3年後には、経営管理の人材領域で市場ナンバーワンの地位を確立し、人材に関するあらゆる課題解決を手がけている状態を目指します。つまり、人材事業だけではなくなっているということです。

手嶋: 経営管理領域から事業を拡大したり、海外に進出したりするのは、いつ頃のイメージでしょうか?

山本: それは3年から5年の間に実行する計画です。国の超越は必ず実現させたいと考えています。海外展開においては、日本のビジネスモデルをそのまま持ち込むのではなく、現地の文化に合わせて180度異なる事業を創造する必要があると考えています。

手嶋: 足元の課題についてですが、株主向けに毎月送っていただいている動画レポートで、「採用が最重要課題だ」と述べられていましたね。

山本: はい、その通りです。

手嶋: 現在40名の組織を、今後どのくらいの期間で、どの程度まで拡大する計画でしょうか。

山本: 今年の12月末までに120名体制にしたいと考えています。現在の3倍の規模です。

手嶋: 20年後の数万人規模のヒュープロから見れば、今年入社する方々は、まさに創成期のコアメンバーですね。営業職では、どのような人材を求めていますか?

山本: 営業経験者の方で、新しい商材を扱ってみたい方や、クライアントの課題解決に深く貢献したいと考えている方には、非常にエキサイティングな環境を提供できると思います。弊社は特定のマーケットで高いシェアを握っているため、市場の多様な課題が社内に集まってきます。それらを元に、お客様と共に新しいプロダクトを開発し、クロスセルで提供していくフェーズにあります。

手嶋: 営業以外の職種はいかがでしょうか。

山本: 全職種で募集しています。エンジニアやデザイナーはもちろん、マーケティング(デジタル広告運用、企画コンテンツ)、プロダクト開発、そして会社の成長を支える経理や法務といったバックオフィスの方々も対象です。

手嶋: ヒュープロはまさに「知る人ぞ知る急成長企業」であり、ストックオプション制度も整備されています。今ならまだ大きな成長の果実を得るチャンスがある、ということですね。今後の採用では、経営層の候補となるような方も視野に入れているのですか?

山本: はい。事業を創るだけでなく、未来の組織や会社を共に創っていくメンバーを募集しています。現在、取締役は私一人ですので、経営層のポジションもまだまだ空いています。20年後のヒュープロでは、経営人材は300人以上必要になると想定しています。

「ロールモデルになる」女性経営者としての想い

手嶋: 最後に、山本さんは女性経営者という側面もお持ちですが、その観点で何か思うことはありますか?

山本: やはり強く思うところはあります。日本の社会では、女性のロールモデルが全体的に少なく、若手女性が起業や経営に挑戦するには、ライフイベントなどを考えるとリスクが大きいのが現状です。そのため、女性経営者はなかなか増えにくい構造にあると感じています。

海外に住んでいた経験からすると、女性が働くことは当たり前でしたし、そこには家事代行やベビーシッターといった社会的なサポートが根付いていました。日本でも女性がより多くの選択肢を持てるようにするためには、女性自身がスキルを身につけること、そして社会全体が経済的に豊かになることが必要です。

私自身がそのロールモデルとなり、提言を続けることで、日本にもっと多くの女性経営者や若手の挑戦者が生まれ、誰もが豊かに働ける社会を実現していきたいという強い思いがあります。

手嶋: 20年後には、山本さんが現在の南場智子さんのような役割を担っているかもしれませんね。

山本: はい、それを目指しています。スタートアップの世界は本当にエキサイティングです。これから挑戦しようと考えている方にはぜひ飛び込んできてほしいですし、もし一歩を踏み出す勇気が出ないという方は、ぜひ弊社で一緒に挑戦しましょう。

手嶋: 本日はありがとうございました。

山本: ありがとうございました。


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