#25 ユニ・チャーム、MPower Partnersも出資。急成長Catlog(キャトログ)が描く「猫様と家族」のグローバル戦略 ー RABO 伊豫愉芸子氏
「スタートアップ オフレコ対談」は、XTech Venturesの代表手嶋とゲストの方をお呼びして対談する番組です。今回は飼い猫の行動やコンディションを自動的に解析する猫専用の首輪型デバイス「Catlog(キャトログ)」などを提供する株式会社RABO代表取締役の伊豫愉芸子さんに登場いただきました。
後編では、ユニ・チャーム社、MPower Partners社をはじめとする錚々たる投資家から出資いただけた経緯や、今後調達資金を生かしてどのように事業成長をするのか、グローバルで通用するプロダクトの勝ち筋など、成長スタートアップの裏側についてお伺いしています。
<スピーカー>
・伊豫 愉芸子 (@oyuki_cat)
株式会社RABO 代表取締役
・手嶋 浩己(@tessy11)
XTech Ventures代表パートナー
<目次>
・ユニ・チャームが出資を決めた理由。鍵は「システムトイレ」との連携
・ESG投資のMPower PartnersがRABOを選んだ「アニマルウェルフェア」の視点
・十数億円の資金使途。グローバル展開も見据えた採用強化
・「猫様の行動は万国共通」グローバル展開の勝ち筋
・独自の採用プロセス「ワークキャンプ」と組織の悩み
・「世界中の猫様にCatlogを」難易度の高い挑戦を共に
ユニ・チャームが出資を決めた理由。鍵は「システムトイレ」との連携
手嶋: 後半戦を始めていきたいと思います。前半の冒頭でも触れましたが、私のZoom画面には伊豫さんが映っており、その頭上にはシュールな形で猫ちゃんがいます。その猫ちゃんが動いているのが気になりながら、伊豫さんの話を聞いていました。
伊豫: こういうところを面白がってくれるのかもしれません。
手嶋: さて、今回の大型資金調達についてです。正直なところ、私たち(XTech Ventures)やSTRIVEさんが伴走させていただく中で、まず理想の資金調達プランを描き、できるだけそれに近づけられるように動きました。
とはいえ、私個人もSTRIVEの堤さんも、キックオフの時点では「これほど理想通りに進むかは未知数だ」というのが正直な印象でした。しかし、ほぼ理想通りに実現させた伊豫さんには、非常に驚かされたというのが個人的な感想です。
本当に錚々たる企業に出資いただいています。発表されている中では、ユニ・チャームさんや、ESG投資を掲げるMPower Partners(エムパワー パートナーズ)さんなど、両社ともグローバルな存在です。その他、デジタルガレージさんなども参加されています。
ユニ・チャームさんやMPowerさんは、頻繁にスタートアップに出資するタイプの企業ではない印象です。それぞれどのような経緯で出資いただくことになったのか、教えていただけますか?
伊豫: まずユニ・チャームさんですが、最初は資本提携のお話ではありませんでした。ある方を通じてご紹介いただき、お会いしたのがきっかけです。
RABOのことは2020年頃からご存知だったようで、「猫向けのIoTプロダクトを手がけており、伸びているらしい」という点でご興味を持ち、お声がけいただいたのが最初です。
手嶋: その当時は、まだ首輪型の「Catlog(キャトログ)」だけでしたか?
伊豫: そうです。ユニ・チャームさんはペット領域では、猫用システムトイレの「デオトイレ」や、フードの「銀のスプーン」を中心に展開されています。
首輪型のCatlog(ペンダント)よりも、トイレの下に置く「Catlog Board(キャトログボード)」が出たタイミングで、より一層関心が高まったようでした。
「デオトイレ」は猫用システムトイレの中でトップシェアだと思いますが、ユニ・チャームさんとしては「デオトイレがどのように使われているのか」「どんな猫様たちが使っているのか」をいかに1to1で把握していくか、という点が論点になっていたようです。
そこをサポートできるパートナーになるのではないか、という期待から初めてご挨拶した、という経緯です。
手嶋: 聴いている方の中にはペット産業に詳しくない方もいると思うので、この業界におけるユニ・チャームさんのすごさを教えていただけますか?
伊豫: 「デオトイレ」は、猫様用トイレ市場の50%強を占めるシステムトイレカテゴリの中で、さらにトップシェアを誇ります。
加えて、ユニ・チャームさんはもともと人間用のおむつや生理用品といった衛生用品が主力です。その技術を応用して開発されたトイレ用のシートも、日本国内だけでなく、非常に多くの国で高いシェアと売上を確立しています。
手嶋: なるほど。つまり今回の出資は、投資家としての側面に加え、大きな事業シナジーや支援を期待している関係性ということですね。
伊豫: はい、このペット領域で20年ほど事業展開されており、我々の5倍以上の知見と、その圧倒的なシェアの高さは非常に大きいです。
ESG投資のMPower PartnersがRABOを選んだ「アニマルウェルフェア」の視点
手嶋:もう一方のMPowerさんですが、メディアではESG投資を掲げ、特に女性起業家に注目していると拝見しました。そして、RABOが女性起業家への投資第一号案件だったとのこと。投資検討のハードルが非常に高い投資家という印象があります。
私も途中のレファレンスでMPowerの方と面談の機会をいただきましたが、相当厳選して投資されていると感じました。なぜRABOに出資いただけることになったのでしょうか?
伊豫:1つは、私が女性であることはもちろんあったでしょうし、社内のマネジメント層も女性比率が9割を超えている点で、ダイバーシティの観点もあったかと思います。
ただ、一番大きかったのは、「猫様の家族である」という視点です。これはESG担当の方とも毎日のように議論させていただきました。課題を語る際、主語が人間になることは多いですが、私たちは「猫の家族」であるという視点です。
グローバル基準のESGには「アニマルウェルフェア」が明確に含まれており、その観点と照らし合わせても、RABOの「Catlog」が取り組む事業は社会課題を解決するプロダクトであると高く評価いただいたのだと思います。
手嶋: 少し余談ですが、ユニ・チャームさんやMPowerさんとの面談もオンラインでしたか?
伊豫: はい、最初の頃はだいたいオンラインでした。
手嶋: その時も、伊豫さんの頭上では猫ちゃんが動いていたのですか?
伊豫: もちろんです。決してふざけているわけではなく、いついかなる時も、オンライン会議ではこのスタイルで臨んでいます。最初にその旨をお伝えしています。
手嶋: それは自己表現の一つということですね。
伊豫: 「アイデンティティです」とお答えしています。
手嶋: (MPowerの)キャシー松井さんなどは、どのような反応をされるのですか?
伊豫: 猫様に対してですか? 「あ、いいですね」といった反応で、かなり場が和みました。
手嶋: なるほど。キャシーさんは私も数回お会いし、非常に気さくな方だと存じていますが、同時に素晴らしい経歴の方です。ユニ・チャームの社長も同様にすごい方々なので、どのような化学反応が起きるのか興味がありました。
あ、リアルな猫様も乱入してきましたね。伊豫さんは猫ちゃんに囲まれて慣れているかと思いますが、このまま続けましょう。
十数億円の資金使途。グローバル展開も見据えた採用強化
手嶋:今回の調達資金は十数億円と多額になります。伊豫さんにとっては通過点だと思いますが、創業時にはイメージできなかった世界に来ているのではないでしょうか。この資金は何に使う予定ですか?
伊豫: まずは、Catlogシリーズがまだ必要な方々に認知されていないため、デジタルマーケティングに限らず、マーケティング活動を引き続き強化していきます。
それに付随する採用も強化します。さらに、成長の二本目の柱とするためのグローバル展開の準備にも充てる計画です。
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手嶋: 人生のどこかで猫様と暮らした経験は、必須ではないがあった方がやりやすい、ということですね。特殊な経験を求めているわけではないと。
伊豫: そうですね。ただ、何かしらのマーケティング領域でのスペシャリストであることを求めています。RABOではかなり広い領域のマーケティングを担うことになるためです。
手嶋: なるほど、領域を広げていってほしい、と。現在、社員は何名ですか?
伊豫: 20名ちょっとです。
手嶋: 今後1年でどれくらいまで増やすイメージですか?
伊豫: 先ほど挙げたマーケティングやエンジニアに加え、カスタマーサクセス(CS)も事業拡大に伴って募集を広げる必要があり、30名から35名体制を予定しています。
手嶋: 昨今のSaaSスタートアップのように一気に数百人規模に増やすのではなく、少数精鋭の世界観を維持するイメージでしょうか。
伊豫: はい、精鋭でやっていきたいです。ただ、さすがに少人数すぎたので、「少数」から「中数」規模くらいにはしたいと考えています。
「猫様の行動は万国共通」グローバル展開の勝ち筋
手嶋: グローバル進出について伺います。「Catlog」や「Catlog Board」のようなプロダクトは、海外にはまだ存在しないのでしょうか?
伊豫: 似たような課題を解決するプロダクトは国内も含めて存在します。一方で、「Catlog」のような首輪型のデバイスは、多くが犬向けの活動量計(トラッカー)であり、猫様の行動分類まで行い、かつこの小型サイズで実現しているものはありません。
手嶋: 私が投資させていただいた当初、グローバル展開がどれほどリアリティのある話か分からず、まずは日本市場制覇を目指しましょう、という段階でした。しかし、伊豫さんとご一緒する中で、想像していたよりもグローバル市場への本気度が高いと感じています。どのあたりに勝ち筋を感じていますか?
伊豫: 一番大きいのは、「猫様の行動は万国共通である」という点です。もちろん住環境による違いはありますが、例えばニューヨークや香港のように、マンション等に住んでいて、外に出ると交通事故のリスクがあるため、ほとんど「家猫」である、といった地域が抱える課題は(日本と)ほぼ同じです。
また、国内の方が海外と比較すると、動物福祉に対する感覚がまだ低い側面もあるため、むしろ海外においてのポテンシャルの方が強いのではないかと考えています。
手嶋: その第一弾として、1月にはラスベガスの「CES」に出展されていました。CESについて説明いただけますか?
伊豫: CESは、毎年1月にラスベガスで開催される「世界家電見本市」のようなイベントです。テスラやサムスン、ソニー、トヨタといった大手企業から、各国のスタートアップまでが電子部品などを展示します。各社が目玉となる発表をそこに持ってくるような場です。
手嶋: 伊豫さんご自身も現地に行かれたわけですが、想像通りだったこと、想像と違ったことはありましたか?
伊豫: CESへの参加は、おととしの視察に続き2回目でしたが、今回は開催自体がイレギュラー(オンラインとオフラインの融合)でした。オフラインの参加者は、一般参加者というよりはメディア関係者や出展企業が中心でした。
その中で、私たちは猫様の写真を前面に押し出したブースを構えたところ、獣医師の方や、猫様と暮らしている方が、吸い寄せられるようにブースに立ち寄ってくださいました。
そして、かなり高い確率で「これは何だ?」「今どこで買えるのか?」「いくらなのか?」という反応をいただけたのは、嬉しい誤算であり、手応えを感じました。
手嶋: グローバル展開において必要な要素は何でしょうか?
伊豫: 大きく2つあり、1つは「言語のローカライズ」、もう1つは「電波法の認証」です。国によって無線の周波数に関する法律が違うため、その認証が必要になります。
手嶋: その認証のハードルは高いのですか?
伊豫: アメリカのFCC認証はすでに取得済みです。国によって異なりますが、例えばEU加盟国であれば、EUの認証を1つ取れば全域で横展開できます。中国は規制が厳しく、コストもかかるといった違いがあります。
手嶋: 具体的な時期や方法は流動的かと思いますが、グローバル展開に力を入れる時期はいつ頃になりそうでしょうか?
伊豫: 理想としては、来年1月のCESに再度出展し、そのタイミングでは「Amazon.com(米国)で買える」という状態にはしておきたいです。その後、どの国に重点的に展開していくかを見極めるため、市場調査を今年から緩やかに始められればと思っています。
手嶋: 少し先の話というよりは、すでに準備が始まっているのですね。
独自の採用プロセス「ワークキャンプ」と組織の悩み
手嶋: RABOは事業もユニークですし、伊豫さんご自身も尖った経営者だと感じています。その結果、非常に濃い企業文化ができていると思いますが、カルチャー面で意図的に狙ってやっていることはありますか?
伊豫: 意図的にやっていることとしては、少数精鋭とも関連しますが、「自律自走」を求めることです。基本的には、スペシャリストが自分の領域で専門性を最大限発揮できる環境を心がけています。
手嶋: 採用プロセスでは、必ず「体験入社」を挟んでいますよね。
伊豫: はい。リファラル(紹介)以外の場合は「ワークキャンプ」と名付けており、1週間から3週間程度、時にはオフィスにも来ていただき、実際に入社した場合どうなるかを試していただきます。これは会社側からだけでなく、候補者の方にも納得感を持ってジョインしてほしいという思いからです。
手嶋: 面接では良いと思った方でも、ワークキャンプを経て、お互いのためにジョインを見送ったケースも結構ありますか?
伊豫: そうですね。割合として半分まではいかないかもしれませんが、ワークキャンプを経てお見送りになる場合はあります。
手嶋: 中途半端な形でお互い入社しても仕方ない、という考えですね。
伊豫: はい。私たちは、ハードウェアとソフトウェアを融合させた、まだ市場がないプロダクトを作っていくという、非常に難易度の高いことに挑戦しているスタートアップです。その難易度に対して食らいついてこられるか、カルチャーが合うか、という点はワークキャンプで特に見るようにしています。
手嶋: スタートアップのCEOは、組織が大きくなるにつれて、プロダクトの悩みから組織の悩みの比率が大きくなりがちです。RABOのメンバーはプロフェッショナルが多い印象ですが、伊豫さんご自身は現時点で組織に関する悩みはありますか?
伊豫: やはりあります。私自身、起業前はプロダクトマネジメントはしていましたが、経営層というレイヤーでのマネジメント経験があったわけではないので、難しさを感じることは多々あります。
その際は、周りの人々、それこそ手嶋さんや(STRIVEの)堤さんといったVCの方々や、マネジメント経験豊富な経営者の方々に相談するようにしています。
「世界中の猫様にCatlogを」難易度の高い挑戦を共に
手嶋: それでは最後に、採用やPRに関して一言お願いします。
伊豫: 私たちは様々な職種で募集をしていますので、ぜひ採用ページを見ていただければと思います。
RABOは非常に難易度の高いことに挑戦していますが、それを実現できる成功確率の高いメンバーが集まっています。ぜひその一員となって、「Catlogを世界中の猫様に届ける」というミッションを一緒に手伝っていただける方を探しております。
手嶋: 少しでも興味がある方、あるいは今は興味がなくても猫が大好きな方は、ぜひ一度RABOの採用ページを見てみてください。サイト自体も見ていて楽しいデザインですので、ぜひご覧いただければと思います。
XTech Venturesとしても超期待の投資先ですので、ぜひ皆さん、どしどしご応募ください。伊豫さん、貴重なお話をありがとうございました。引き続き急成長をよろしくお願いします。
伊豫: ありがとうございました。
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