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#10 セキュリティに特化したIoT企業へ、新たにホームセキュリティ領域で事業を始めたワケー Strobo 業天亮人氏

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「スタートアップ オフレコ対談」は、XTech Venturesの代表手嶋とゲストの方をお呼びして対談する番組です。今回は2015年に設立し、ホームセキュリティ×IoT領域で事業を展開するStrobo社。同社のCEOである業天亮人氏をゲストにお迎えします。

後編では、Strobo社について聞いています。2021年には、Strobo社がセキュリティカメラサービスを提供開始。なぜこのタイミングで開始したのか、Strobo社のホームセキュリティサービス「leafee(リーフィー)」の概要や現在の組織体制・採用状況もお聞きしました。

スピーカー

・業天 亮人氏(@gyoten
Strobo代表

・手嶋 浩己(@tessy11
XTech Ventures代表パートナー

※記事の内容は2021年11月時点のものです。

目次

# Strobo社は、なぜホームセキュリティ領域を選択したのか
# Strobo社のビジョン、セキュリティに特化したIoT企業へ

# Strobo社は、なぜホームセキュリティ領域を選択したのか

手嶋:続いて、いよいよStrobo社の話をしていきます。なんと業天さんのStrobo社もクラウドカメラをやるというリリースを見て、僕からすぐ連絡しました。セーフィーに対抗していくのかと驚いたので。セーフィーが独走中の市場だと思うので、どういう構想を考えているのか聞いていきたいなと思っています。

まず「ソニーみたいな会社を作りたい」とハードウェアスタートアップで創業したってことなんですけど、最初はなぜホームセキュリティのサービスだったんですか?

業天:リーフィーは創業して2年ぐらい経ってからリリースしたサービスです。もともとStroboってIoT×ハードウェアで、「ソフトウェアでリアルな生活空間の体験を変えたい」くらいしか方向性を決めずに作った会社なんですけど。そういった中で、最初は既存のメーカーさんと共同でIoT製品の開発というかプロトタイピングをしていたんですよね。

ただ時間が経つにつれ、やはり1社目のように、自社のIoTプロダクトでチャレンジしたいと考えるようになりました。そのタイミングで、なぜホームセキュリティーに、防犯という領域に注目したかというと、僕は防犯意識がめちゃくちゃ低くて、窓を開けっぱなしにして奥さんから怒られるというのがありまして。それをきっかけに、「自分たちが持っているIoTの技術って防犯に使えるよな」と気づいて。そういえばセコムも大きい企業だとか。それまで考えたこともなかったんですけど。

防犯が大好きな人って少ないと思うんですけど、生活の中では切っても切れないもので非常にいいテーマだなというところから、ホームセキュリティに注目し始めました。

手嶋:なるほど。創業から6年、リーフィーを始めてからも3〜4年ぐらい経ちましたが、いろいろと大変なこともあったと思います。ソフトウェアのビジネスに比べると複雑な事業に見えますが、ソフトウェア事業やウェブサービスにしようかなと思ったことは1回もないんですか?

業天:それは一度もないですね。

手嶋:それは、ある程度の手応えがあったからですか?それとも、やっぱりその領域をやりたいと思ったから?

業天:毎日大変なことはいい意味でたくさんありますが、お客様に引き上げていただいて今はすごくリーフィーが伸びている時期です。ただそこに至るまでは結構時間がかかっていて。でも、その中で思いを持ち続けてこられたのが要因ですかね。家電×IoTの領域に情熱をもって取り組む人って意外に少なくて、「やっぱりこの領域は自分がやらなければ」と思いながら続けてきたところがありますね。

手嶋:なるほど。リーフィーを知らない方も結構いると思うんですけど、具体的にどういう事業を展開していて、どういうお客さんにどういう価値を提供していて、今どういう状況なのか教えてもらっていいですか?

業天:アプリ、センサー、カメラを使ったセキュリティサービスを展開しています。

もう少し具体的に言うと、やっぱりセコム・アルソックがすごく有名なサービスだと思います。家にセンサーをつけておいて、侵入者が来た場合はもう爆音で警報が鳴って警備員が来てくれるという、安心して暮すためのサービスなんですけど。工事が必要な上に、導入するだけで10万円かかったりとか月額6000円かかるとか、とにかく高価なサービスで、日本だと3%ぐらいしか普及してないんですよね。

手嶋:たしかに、先輩たちのサービスはお高いですよね。

業天:そういった中で、初期費用0円から使えるようにしたい。月額1000円ぐらい使えるようにしてあげたいと思って。セキュリティサービスって一度契約すると5年縛りがあるんですよね。長いじゃないですか。最近は2〜3年で住まいを引っ越す方も多いと思うんですけど、そこにマッチしないので、「いつでも解約できますよ」とか、そういった手軽さを押し出したセキュリティーサービスになっています。

手嶋:なるほど、すごく雑に言うとホームセキュリティのDXってことですね、やられてることは。

業天:まさにその通りで、警備業界をDXするような事業とも言えるんですよね。警備会社って日本に9600社くらいあるんですよ。その中で、既存の大手セキュリティサービス、専門用語では機械警備と呼ばれるサービスを提供できる会社って本当に一握りなんです。だから寡占で高い価格になってるんですけど。

業界でもよく言われているのが、「もう少し低価格なセキュリティのマーケットって絶対にあるよね」と。じゃあやればいいじゃんという話なんですが、テクノロジーがないと難しい。セコム、アルソックと同等のテクノロジーを販売している会社はあるんですけど、高いんですよ。

なかなか安くならないから新しい技術が必要なんですけど、僕らは今関東では中堅警備会社と組んで、アプリから警備に呼び出せるサービスも提供しているんですよね。

手嶋:それは資本業務提携先のエルテスとかと連携してる部分もある?

業天:エルテスのグループ会社ですね。

手嶋:なるほど。ありがとうございます。リーフィーの事業は2017年ぐらいからやっているんですか?

業天:そうですね。

手嶋:具体的な数字は言えないと思うんですけど、事業のコンディション的には3〜4年経って、どういう手応えですか?

業天:最初の2年ぐらいはかなり苦戦して。これまでに小さなピボットをかなりしていまして。最初の打ち出しが、賃貸・一人暮らし向けのホームセキュリティだったんですよね。ただ今のユーザーは、戸建てに住んでいる家族世帯の方が圧倒的に多くて。不動産企業と提携して、「全部の賃貸に入っているセキュリティを作るぞ」と意気込んでいたのですが、そこがかなり苦戦をしました。

自社販売に切り替えたりターゲットから見直したりした後は、事業がうまく回り始めて。今はIoTxSaaSITaaS型と内部的には言っているんですけど、サブスクリプションの売り上げが積み上がっていて、継続率も非常に高い点にかなり手応えを持っています。

手嶋:じゃあセーフィー、フォトシンスの次はStroboかもしれないですね。時間軸は別にしても、続けていきたいなと思えるくらいの手応えがあるという感じですかね。

業天:そうですね。僕らも上場を目指している状況ですね。

手嶋:セーフィーは驚きの数字ではあったと思うんですけど、IoT起業家としては、すごくやりやすくなった部分もあるんですか?

業天:それはありますよね。やっぱりセーフィーとフォトシンスが上場して、IoTの市場を切り拓いてくれたと感じます。特にSaaS型を押し出していただいてる中で、自分たちもSaaSなので、IoT×SaaSのイメージをされやすくなったのが大きいですね。

あと2社の上場をきっかけに、IoT企業が2014〜2016年に結構出てきたと思うんですけど、今も生き残って伸びている会社は、やっぱりSaaSとセキュリティにたどり着いてるなみたいなところは感じましたね。みんなそこの領域に行っているなと。

# Strobo社のビジョン、セキュリティに特化したIoT企業へ

手嶋:今までリーフィーで提供していたハードウェアは、いわゆるセンサーですよね。何かあったときに異常を感知できるセンサーを提供した、あとはクラウドでの月額費用という建てつけだったと思うんですけど。なんと、先日のリリースによるとカメラを出すと。リーフィーブランドのセキュリティカメラを。

これは僕はすごく雑に、「あれ、セーフィーみたいなことを始めたのかな」と思ったんですけど。ここで自社ブランドでカメラ事業に参入するのはどういう狙いなんですか?

業天:カメラのニーズが非常にお客様から多かったというのと、あと一番大きな理由は、法人もターゲットに広げていこうというところで、その第一歩としてカメラを提供することにしました。

リーフィーは今も個人宅のユーザー様がメインなんですけど、法人でお問い合わせをいただいたり実際に購入していただいたり、物流倉庫やクリニック、飲食店などで幅広く使われているんですよね。そういったところで、「これ、カメラもついたら最強なんですけど」という声が多くて。そこに対して、法人向けの提供をより強化していきたいと考えたんです。

手嶋:なるほど。カメラ事業参入の狙いでいくと、法人市場への参入って感じなんですか?

業天:そうですね。あとはやっぱりセキュリティサービス事業を伸ばしていく中で、そこにカメラが必要になってきたので提供している状況ですね。

手嶋:面白いですね。セーフィーとフォトシンス、Akerunは法人メインで開拓していて、個人向けにも出ていきたいという意向が資料から出てきてたんですけど、Strobo社のリーフィーに関しては、今まで個人向けにやってたものをこれからは法人市場にも出ていくということですよね。率直に言うと、セーフィーと競合する部分も出てきそうな感じですか?

業天:そうですね。エンドユーザーから比較検討される場面は出てくると思いますね。

手嶋:こういうお客様ならリーフィーのほうがいいんじゃないか、というのは仮説でいくとどうでしょうか?

業天:リーフィーはやはり防犯対策がメインなので、防犯を目的にしているお客様にとってはすごくいいのかなと思います。

というのは、初期費用がリーフィ―のほうが安く、0円から使えるプランもあるので手軽に防犯対策をスタートしていただけます。あとは警備員が呼び出せるとか、何か問題が起こった際に解決するサービスまであるので、そういう意味では防犯ならリーフィーというところですね。

手嶋:セーフィーは、さきほど話題に出たように、PLに効くみたいな訴求ポイントもありましたもんね。監視やセキュリティだけではなくコスト削減、売り上げアップの文脈もありますが、リーフィーはあくまでもセキュリティ・防犯にフォーカスするってことですね。

業天:そうです。

手嶋:ちなみにセーフィーのカメラは仕入れて販売しているじゃないですか。御社のカメラは自社開発なんですか?

業天:ソフトウェアは自社開発なんですけど、ハードウェアについてはOEMという形でチャレンジしてみたというところですね。

手嶋:では、ビジネスモデルとしては他の会社さんから仕入れて、自社ブランドでやらせていただいてるという感じですね。

業天:そうですね。少し細かいプロ向けのお話をすると、セーフィーは仕入れて売ってはいるんですが、ほとんどのものってSafieブランドではないので、Android携帯でいうとGoogleとシャープみたいな形で。そこはちょっと違うんですけど、でもこれがビジネス上も、あるKPIが変わってくるポイントにはなりますね。

手嶋:なるほど。わかりました。これは言える範囲でいいんですが、いつから準備してたんですか?カメラのリリースは。

業天:2021年の初めぐらいからですね。

手嶋:安心しました。セーフィーの目論見書を見て急に始めたわけではないということですね。

業天:逆に、もしそうだったらそれはそれですごいですよね(笑)。ハードウェアベンチャーって、実はソフトウェア開発のほうが大変ということも隠れた事実です。そのスピードでできたらすごいですね。

手嶋:ちなみに、Stroboって何人ぐらいの組織なんですか?

業天:全部で20人ぐらいです。

手嶋:プロダクトラインナップを広げていくための採用とかは今回したんですか?

業天:いやもう採用は今、一番の課題であり頑張っているポイントですね。

手嶋:なるほど。今回はIoTスタートアップについて語るぞみたいなテーマなので、IoTスタートアップに興味ある方、でもフォトシンスとかセーフィーは上場してしまった。「夢があってSOをもらえるから、俺は未上場の会社のほうがいい!」というようなエンジニアの人が読んでくれているかもしれないんですけど、どういう人を採用していきたいですか?

業天:全職種で募集はしているんですけど、その中でも特に、ビジネスサイドの責任者や広報を務めてもらえる方ですかね。弊社には本当にビジネスサイドの人間がいないので。

手嶋:業天さんだけでやってるような状態なんですか?

業天:あともう1人とか、そういう規模でやってますね。

手嶋:その状態で「責任者」というのはあまりピンと来ない人もいると思うんですけど、業天さんとどうやって一緒に動くのか。何の責任者なのか。その辺りはどういうイメージですか?

業天:弊社は今COOがいないので、本当にCOOを目指せるようなポジションだと思っています。

リーフィーって実は事業提携の引き合いが結構多くて。ただ自分たちの人的なリソースが足りなさ過ぎて、機会損失も少なくないんです。そこの仕組みを立ち上げて、レバレッジがかかるような提携を設計してくれたらうれしいですね。

立ち上げるって大変じゃないですか。タスクがめちゃくちゃあるので。そういうところを泥臭くやれる人が求めるイメージですかね。1人目のビジネスサイドとして、僕と密に働く形になると思います。

手嶋:COOになれる可能性もあるということですね。他の職種だとどうですか?

業天:PMができるようなUIデザイナーも募集中です。

手嶋:意外と急募なのはエンジニア以外の職種なんですね。

業天:そうですね。エンジニアももちろん積極的に募集しているんですけど、Stroboにはすでに良いエンジニアが集まってくれているので。だからこそ、難しい技術が実現できているっていうところがあるんですけど、事業をビジネスサイドから伸ばしていく余地があるフェーズになっていますね。

手嶋:なるほど。Strobo自体がいろいろな会社から投資を受けていて、IPOを狙っていくと思うんですけど、今はホームセキュリティのDXを掲げて、そこにフォーカスして結果が出てきてるというタイミング。長期的にはどういう範囲で事業を展開していきたいですか?

業天:一つは、2030年に100万世帯にリーフィーのセキュリティサービスを展開していきたいというビジョンがあります。超長期的には、セキュリティに特化したスマートホームの企業になりたい。IoTでセキュリティの課題を解決したいというところにかなりこだわっています。逆に、総合型の家電メーカーは目指していないのがポイントですね。

一つのドメインをソフトウェアで深く解決できる、生活の中のリアルな空間上の課題を解決できる企業になりたい。そのために、コネクテッドなハードウェア、カメラやスマートセンサーを作ってるんですけど。そういった姿を目指しています。

手嶋:そうすると、当面はやっぱりホームセキュリティのDXを深掘りしていく感じですね。

業天:ビジネスも含めてのセキュリティサービスですね。

手嶋:まずはその業態でIPOの実現を目指すと。あと何か読者の方に言っておきたいこととかありますか?

業天:リーフィーは初期費用0円から……

手嶋:そっか。ユーザーとしてもぜひ使ってください、という話ですよね。

業天:そうですね。まさに個人の方でもぜひご利用いただけたらと思います。14日間の無料体験があって、本当に初期費用0円から試せるというところが、今のホームセキュリティ業界では革命的なことなんですね。一度契約したら5年使わなきゃいけないので。リーフィーは取り外しもしやすい点がいいところなので、まずお試しいただきたいです。

もう一つが、スタートアップの経営者の方に向けて。Stroboはオフィス法人向けの展開を始めていきたいので、成長中の企業や、あるいは創業したばかりの企業のオフィスに導入してもらいたいという気持ちが非常に強いです。

防犯対策もそうなんですけど、経営者も社員もカメラの画像を見ることができるので、オフィスの様子がわかって結構楽しいんですよ。「今みんなが集まっているな、自分もオフィスに向かおう」とか、リモートワークをミックスしている企業だと、そういった活性化も起こったりとかするので、オフィスでリーフィーのカメラを使ってみたい方はぜひ申し込んでいただきたいですし、直接DMもいただけたらなと思います。

手嶋:ありがとうございます。想像以上に深みのある話ができたと思います。IoTの領域の中でも、Strobo社は未上場のIoTスタートアップで、かつ、それなりの利益を積んでいる珍しい会社。皆さんもぜひプロダクトや会社に注目していってほしいなと思っています。私と業天さんは、さっき話に出たエルテスの菅原さんという共通のお世話になってる方がいて、その飲み会で会うこともあると思いますけど、今後もよろしくお願いします。

業天:よろしくお願いします。ありがとうございました。


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