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#27 創業3年で十数億円調達。KiteRaが描く「社労士×事業会社」の経済圏構想 ー KiteRa植松隆史氏

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「スタートアップ オフレコ対談」は、XTech Venturesの代表手嶋とゲストの方をお呼びして対談する番組です。今回は社内規程管理クラウドの社労士向けサービス「KiteRa Pro」などを展開する株式会社KiteRa代表取締役 執行役員 CEOの植松隆史氏に登場いただきました。

後編では、発表したばかりの新プロダクト「KiteRa Biz」の反響の大きさや今後の構想、そして拡大する組織体制を構成する上で大切にされていることをお伺いしています。

<スピーカー>

・植松 隆史 
株式会社KiteRa代表取締役 執行役員 CEO

・手嶋 浩己(@tessy11
XTech Ventures代表パートナー

<目次>

・創業3年での大型調達。その背景にある「二の矢」の構想
・エンタープライズの「規程管理」を変革する
・「社労士×事業会社」で創るワンプロダクトの経済圏
・1万社のデータが導き出す「最適なルール」とAI活用
・ガバナンス・コンプライアンス領域への進化
・資金調達発表の反響と、採用へのインパクト
・組織急拡大への挑戦。110名体制と「カルチャーの維持」
・投資家から見たKiteRa。落ち着きと安心感のある成長企業

※記事の内容は2022年4月時点のものです。

創業3年での大型調達。その背景にある「二の矢」の構想

手嶋:ここからは後半戦として、今後のKiteRaの展開についてお伺いしていきたいと思います。まず、2022年3月に実施された十数億円の資金調達についてです。

2019年4月の創業当時は、銀行融資の可否も手探りだった状態から、わずか3年で十数億円規模の資金調達をまとめ上げられました。今回、どのような狙いや方針に基づいて、この規模の金額や調達の意思決定をされたのでしょうか?

植松:そうですね。今回の調達に関しては、手嶋さんとも初期のラウンドから継続的にコミュニケーションを取らせていただいており、その中での判断でした。大きな理由は主に2点あります。

1点目は、社労士向けプロダクトが順調に伸長し、数字としても成果が上がってきたという確かな手応えがあったことです。PMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成し、収益もしっかりと確保できるようになったという判断がありました。

2点目は、事業会社向け展開への布石です。私自身、以前から事業会社向けのサービスをやりたいという想いを持っていました。

事業の基盤となる社労士向けプロダクトが確立できたため、次の「二の矢」として事業会社向けプロダクトを開発しようと考えました。それに向けたチームビルディングやマーケティングへリソースを投下するために、今回の調達に動いたというのが最大の理由です。

手嶋:現状のKiteRaには、2つの異なるフェーズのプロダクトが存在しているということですね。一つは、シリーズAのステータスを持ち順調に伸びている「KiteRa Pro」。

そしてもう一つは、これから本格的にリリースしていくシードフェーズの事業会社向けプロダクト「KiteRa Biz」です。創業フェーズのプロダクトと成長フェーズのプロダクト、この2つが併存しているという前提で、会社全体としてシリーズAの資金調達を行ったという理解でよろしいでしょうか。

植松: はい、その認識で間違いありません。

手嶋: この2つの事業を伸ばしていくために、今回は十数億円を調達されましたが、金額的にはほぼ既存投資家からの出資で構成されていますね。新規でSansanさんやDIMENSIONさんにも入っていただいていますが、既存投資家が中心となっていることからも、彼らが御社の考え方に共感し、「これはいける」と確信していることが見て取れます。

エンタープライズの「規程管理」を変革する

手嶋: 改めて、事業会社向けプロダクトである「KiteRa Biz」についてお聞かせください。これはどのようなコンセプトのプロダクトであり、今後どのように成長させていこうと考えていらっしゃるのでしょうか?概要を教えていただけますか。

植松: 承知いたしました。「KiteRa Biz」に関しては、まずは大企業、いわゆるエンタープライズ企業の社内規程類の管理を効率化するというコンセプトで開発しています。なぜ最初にエンタープライズ向けに作ったかというと、単純に彼らが保有する規程の数が非常に多いからです。

特に金融機関系の企業様ですと、100や200といった数の規程があるのは当たり前ですし、グループ会社を含めると膨大な数になります。しかし実態としては、それらが単にファイルサーバー等のストレージに置かれているだけで、きちんとした運用管理プロセスに乗っていないケースが往々にしてあることが分かってきました。そこで、まずはエンタープライズ企業が抱えるこのペイン(課題)を解決していきます。

単なる「規程管理の便利ツール」で終わらせるつもりはありません。今後はこの文脈の中に、ガバナンス、内部統制、リスクマネジメントといった要素を組み込んでいきたいと考えています。現在は、会社の制度やルールを整えて運用に乗せるところが主眼ですが、将来的にはそれが現場のオペレーションと正しく紐付いているかどうかまでを監視し、整備できるようなプロダクトへと拡張していきたいという構想を持っています。

「社労士×事業会社」で創るワンプロダクトの経済圏

手嶋:社労士向けプロダクトと事業会社向けプロダクトについて、社内ではどのようなバランスや体制で推進していこうとされているのでしょうか?

植松:現在はまだPMFを達成させるフェーズですので、縦割りなどの組織構造は作らず、5〜6名のメンバーで一丸となって進めている状況です。

ただ、マーケットサイズで言えば当然事業会社向けの方が大きいため、徐々に人員などのリソースはそちらへシフトしていくことになるかと思います。

最終的な構想としては、別々のプロダクトではなく「ワンプロダクト」のようになっていくと考えています。現在の社労士向けプロダクトも、結局はその背後に顧問先である企業が存在しています。最終的には、そこが繋がった一つの経済圏のような形になり、一つのプロダクトとして統合されていくイメージを持っています。

手嶋:「繋がってくる」というのは、具体的にどういうことでしょうか?

植松:企業向けであれ社労士向けであれ、社労士はその先に多くの中小企業と繋がっています。KiteRaというプロダクトを通じて、社内規程の管理・運用・作成ができる状態が構築されれば、そこから様々なサービスや価値提供がスタートできるような形になれば良いと考えています。この領域ではまだ際立ったプレイヤーが存在していないのも事実です。

1万社のデータが導き出す「最適なルール」とAI活用

手嶋:先ほど「単なる便利ツールではない」というお話がありましたが、そこが高いバリュエーション(企業価値評価)がついている理由でもあると思います。

多くの規程が格納され、顧客数が増えれば増えるほど、より便利になったり精度が上がったりするという要素は存在するのでしょうか?

植松:現在、およそ1万社ほどの規程データが我々のデータベースに蓄積されています。このデータを統計的に処理・分析することで、その企業にとって最も相応しい制度やルールがどのようなものかをレコメンド(推奨)する機能を実装していきたいと考えています。

また、AIの活用も視野に入れています。社内規程には法律に準拠しなければならない箇所が多く存在します。そういった項目の欠落がないか、違法性がないかといったチェックを行うための教師データとしても、蓄積されたデータは活用できます。データがあればあるほど、我々が提供できるクオリティやバリューは向上していくと考えています。

手嶋:KiteRa Bizに関しては、水面下で様々な準備をされ、プレセールスも動かれていると思いますが、感触はいかがでしょうか?かつて社労士向けプロダクトを立ち上げた時と比較して、どのような雰囲気を感じていますか?

植松:その点に関しては、当時とは全く状況が違います。実は今、引き合いがものすごく強く、人手が足りないほどパンパンな状態です。

手嶋:採用目的のPodcastでもあるので、「事業に自信があります」とはっきりおっしゃっていただいて良いと思いますよ(笑)。手応えが全く違うということですね。

植松:はい、手応えは創業当時とは比べ物になりません。自信はあります。

手嶋:企業側の背景として、なぜ今ニーズが高まっている、あるいは刺さっていると分析されていますか?

植松:まだリリースしたばかりで詳細な分析までは至っていませんが、潜在的に「管理運用の課題がありつつも放置されていた状態」が継続的にあったのだと考えています。

今のタイミングで社会のトレンドが急変したからということではなく、昔から課題はありながらも代替手段がなかったため、「とりあえず放っておこう」となっていたのだと思います。重要ではあるが緊急ではない、いつかやれればいいという状態で止まっていたところに、解決できるプロダクトが登場したため、「そういえばずっとやりたかったことだ」という感覚で受け入れられているのではないでしょうか。

ガバナンス・コンプライアンス領域への進化

手嶋:今回の資金調達を踏まえ、植松さんの中で見えている計画や「こういうことをやっていくぞ」というビジョンは、どれくらい先まで描かれているのでしょうか。解像度高く見えているのは1年後くらいまででしょうか?

植松:そうですね。エンタープライズ向けには、この1〜2年でしっかりと市場を取りに行くつもりです。その先には中小企業向けの展開も考えています。

また先ほど申し上げた通り、最終的には内部統制やコンプライアンスといった領域へプロダクトを進化させていきたいと考えています。

手嶋:ご自身の中では、「こういうプロダクトに進化させよう」「その時はこういう機能やUIが良いだろう」というレベルまでイメージがあるのでしょうか?

植松: はい、あります。

手嶋: 社長である植松さんが考えているそのイメージを、社内ではどのように共有されているのですか?

植松:今月から「プロダクトユニット」という部署を新設しました。ここはプロダクトのあるべき姿や理想像を再定義し、デザインや企画を行う場所です。

まずは私が構想しているイメージをそこにインストールし、ゴールから逆算して、中長期的に2〜3年かけてどうプロダクトを進化させていくかという計画に落とし込もうとしています。このプロダクトユニットから、徐々に全社へ浸透させていくイメージです。

手嶋:そのプロダクトユニットのメンバーとは、どのようにすり合わせを行っているのですか?

植松:定例ミーティングという形ではありませんが、ユニット長とは必ず毎週1on1を実施しており、そこで私の頭の中にある構想を同期させるようにしています。

資金調達発表の反響と、採用へのインパクト

手嶋:今回の十数億円の資金調達に関するプレスリリースを出された後、様々な反響があったと思います。大きく分けてどのような反応がありましたか?

植松: 大きく2つあります。1つは、調達したということで当社への営業が増えたことですね。そしてもう1つは、純粋に問い合わせが増えたことです。LP(ランディングページ)上のフォームからの問い合わせが急増しました。

手嶋:「働きたい」という人からの反響はいかがでしたか?

植松: はい、プレスリリースの中で、手嶋さんにもご参加いただく採用イベントの告知を出したのですが、初日で6名ほどの応募がありました。反応はあるなと感じています。

手嶋:60人ぐらい欲しいところですけどね(笑)。

植松: はい、これから集めます。

手嶋: PRに関しては、プロダクトでは競合していなくても、採用市場では強力な競合が存在するため、KiteRaとしても強化していく必要がありますね。私も適度にツイートなどで応援させていただきます。やりすぎると逆効果になることもあるので、バランスを見ながらですが。

組織急拡大への挑戦。110名体制と「カルチャーの維持」

手嶋: ここからそれなりの規模で採用を行っていくということですよね。

植松: 現在は40名ほどですが、来年の今頃には110名程度まで増員したいと考えています。

手嶋:倍以上の成長ですね。先輩起業家の話などを聞かれていると思いますが、今の規模から100名超の規模にするにあたり、気をつけていることはありますか?

植松:やはり「組織カルチャーの崩壊」です。「30人の壁」「50人の壁」といった話はよく聞きますので、しっかりとカルチャーを壊さずに組織拡大していかなければならないと強く思っています。そこさえしっかりしていれば、幸いプロダクトは強いため、事業が大きく崩れることはないと考えています。とにかく組織づくりに注力したいです。

手嶋:KiteRaが大切にしているカルチャーを言語化すると、どのようなものになりますか?

植松:ミッションである「安心して働ける世界をつくる」に共感してもらっていることが大前提です。それを自分たちの会社の中でも体現していくこと、そういった環境づくりに興味や関心があることが第一です。

また、我々経営陣を含め年齢層がやや高めということもあり、落ち着いた雰囲気の会社です。「キラキラ系」や「ガンガンやる」といったノリの会社ではないことも、一つの文化や雰囲気としてあります。そういった点に共感していただける方が良いと考えています。

手嶋: 人を増やすに伴い、オフィスの移転も予定されていると思います。新しいオフィスでの働き方や、オンラインとオフラインの使い分けについて、どの方針をお持ちですか?

植松: 私を含め経営陣は、対面でのコミュニケーションを重視しています。そのため、「仕事をする場」よりも「集まる場」としてのオフィスを目指したいと考えています。

現在は週1回程度の出社ですが、今後は週3〜4回程度まで増やそうかと考えています。多少の反発はあるかもしれませんが、やはりスタートアップとしての原動力は、人と人とが接する中で生まれる新しいアイデアやイノベーションにあると信じています。そういった創発が生まれる場所としてオフィスを考えていきたいです。

手嶋:移転はいつ頃の予定ですか?

植松:2022年7月から8月の間には完了している予定です。

手嶋:KiteRaに興味を持った方は、どこを見れば採用情報が確認できますか?

植松: Wantedlyが最も情報が充実していますので、そちらをご覧いただくのが良いかと思います。採用サイトは現在制作中です。

手嶋: では、このポッドキャストの概要欄にもリンクを貼っておきますので、Wantedlyを見ていただくのが一番ですね。

投資家から見たKiteRa。落ち着きと安心感のある成長企業

手嶋:今後の話に関しては、私もリードインベスターですので、植松さんにあまり詳細を話されても…という部分もあり、後半は少し内容を抑えめにしたかもしれません。

お互いの話を聞いていて感じたのは、スタートアップの中では少し変わったカルチャー、つまり「落ち着いて安心感を持って働ける」環境だということです。逆に言えば、ガツガツ感や「俺たちイケてるぜ」といった雰囲気を求めている人とは少しずれるかもしれませんね。

植松:そうですね。ただ、そういった方でもウェルカムです。とにかく一度会いに来ていただき、お互いに話をして接点が持てるかどうか確認できればと思います。

手嶋: そうですね、ぜひ採用サイトやWantedlyを見ていただければと思います。

ちなみにKiteRaに対しては、XTech Venturesの2号ファンドから最大規模となる累計10億円弱を投資させていただいています。ファンドの出資者からは「1社にそこまで偏っていいのか?」「ファンドの10分の1を突っ込むのは定石外ではないか」という反応もありました。

しかし、この1年ほどご一緒させていただく中で、自信を持って投資している先でもあります。SaaSに興味がある方、成長するスタートアップに興味がある方、あるいはコーポレートガバナンスや労務分野に興味がある方など、様々な理由があると思いますが、ぜひ気軽に話を聞きに来ていただければと思います。それでは植松さん、長時間にわたりありがとうございました。最後に一言あればお願いします。

植松: ありがとうございます。手嶋さんにおっしゃっていただいた通り、現在、全方位的に採用を行っております。新しいオフィスも非常に良い環境になりますので、ぜひ遊びに来ていただければと思います。本日はありがとうございました。



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