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「打席数」が、最強の武器になる。次世代のキャピタリストに求める「愛と熱量」(西條 晋一)

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2018年の設立以来、シード・アーリーステージのスタートアップへ積極的な投資を続けてきたXTech Ventures(以下、XTV)。手嶋浩己と共に共同創業し、数多の起業家と並走してきた代表パートナーの西條晋一は、今このタイミングでVC業界に飛び込む意義をどう捉えているのでしょうか。 

「投資」の裏側にある哲学、AI時代における「人間拡張」への期待、そしてXTVだからこそ得られるキャピタリストとしての「成長環境」について、本音を語ってもらいました。


代表パートナー 西條 晋一

1973年徳島県生まれ。1996年早稲田大学法学部卒業後、伊藤忠商事に入社し財務部・為替部を経験。2000年サイバーエージェントに入社。サイバーエージェントFX、ジークレストなど多くの新規事業、子会社の立ち上げに携わり、複数社の代表取締役を歴任。2004年取締役就任。2006年にはサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)の初代社長として、日本およびアジア各国のベンチャー投資業務と組織を構築。2008年には本社の専務取締役COOに就任。2010年から約2年間は米国法人の社長を兼務しシリコンバレーに駐在。2013-2017年WiL共同創業者ジェネラルパートナー。2018年XTechおよびXTech Venturesを創業。2018年エキサイトホールディングス代表取締役社長CEOに就任。2022年日本ベンチャーキャピタル協会理事に就任。  

「見えないもの」を信じ、並走する。シード投資こそが、私の原点

─まずはXTVの創業から現在までの手応えについてお聞かせください。サイバーエージェント、WiLを経て、なぜ再び「シード・アーリー」のスタートアップへの投資にこだわったのでしょうか。

西條: まず、XTVの手応えはかなり感じています。もともと、XTVを立ち上げた背景には、サイバーエージェントでベンチャーキャピタル部門(現在のサイバーエージェント・キャピタル)を立ち上げた時の原体験があります。

当時から変わらないのは、業界構造や起業家、そして事業そのものを深く理解できる人間が投資すべきだという考えです。

VCには金融的なアプローチや技術的な専門性など多様なスタイルがあって良いと思いますが、私はやはり「ITビジネス」という観点で投資判断を行い、経営者として起業家と対等に話ができるスタイルを重視してきました 。

サイバーエージェントの後に参画したWiLは大きなファンドで、レイターステージの投資も経験しました。しかし、会社は規模が大きくなればなるほど、上場マーケットに近づき、判断材料となる指標(売上やプロダクトの完成度など)が増えていきます 。

一方で、シード・アーリーステージは人間で言えば「赤ちゃん」のような状態です 。見える数字や材料が極めて少ない。そうした「まだよく分からない状態」のものに対して、自分の経験や起業家の言葉を頼りに仮説を立て、時には「空想」して投資を実行する。そして、成長の過程で壁打ちをしながら伴走していく。

両方を経験した結果、自分の能力が最も発揮でき、かつ純粋に「面白い」と感じるのは、やはりこのフェーズだと再確認しました。XTVでは、私自身の経営者としての経験も総合的な強みとして活かせており、ファンドのパフォーマンスにもつながっています。


バブルの波に踊らされない。20年の経験が告げる「規律」の重要性

─2018年のファンド設立以降、投資環境は大きく変化しました。特に近年のスタートアップの投資環境をどのように見ていますか?

西條 XTVを設立した2018年頃は、VCの数も増え、ファンドサイズも大型化し、起業家に対して豊富なマネーが集まっていた時期です。特にアメリカのSaaS企業の成功を背景に、上場・未上場問わずバリュエーション(企業評価額)が高騰する、いわゆる「SaaSバブル」のような側面がありました。

私は20年以上キャピタリストをやっているので、こうした「ブーム」や「波」を何度か見てきています。波に乗ることは重要ですが、同時に、波から落ちれば致命傷になりかねないという危機感も常に持っています。そのため、特にハイバリュエーション(割高)な案件については、慎重に規律を持って投資判断をするよう心がけていました。

─投資領域について、XTVは「決めすぎない」スタンスをとっていますが、その真意は何でしょうか?

西條 投資のスタンスは、ウォーレン・バフェットがかつて「ITには投資しない(自分が理解できるコカ・コーラのようなものに投資する)」と言ったように、「分からないものには投資しない」というのが基本だと思っています。

私の場合、ITビジネス全般であれば、これまでの経験上、構造や勘所が分かります。広告、メディア、コンテンツ、フィンテックなど、私自身が事業として手掛けてきた経験が幅広いため、結果として投資領域も広くなっているのです。

打席に立たなければ、ホームランは打てない。圧倒的な「場数」が人を育てる

1号、2号ファンドと実績を積み重ねてきましたが、組織としての現在の課題や、今後強化したいポイントはどこにありますか?

西條私と手嶋は、上場企業の役員経験があり、新規事業を複数回立ち上げているなど、共通項が多いパートナーです。あうんの呼吸で動ける良さはありますが、組織としての課題は大きく2つあります。

1つは、投資件数の増加に伴うリソースの問題です。新規投資と既存投資先の支援、理想はこの両方を1人の担当者が一気通貫で行うことですが、件数が増えてくると物理的に難しくなります。将来的には、既存投資先のバリューアップ(支援)に特化した人材と、新規投資に強い人材といった役割分担も必要になってくると考えています。

もう1つは、投資領域の拡大です。ITは今や「Deep Tech」や「AI」も含め、あらゆる産業に浸透しています。私や手嶋がこれまで得意としてきた領域以外の知見、例えば研究開発や製造業といったバックグラウンドを持つ人材や、未知の領域を専門的に学習していける人材の必要性が高まっています。

─このタイミングでXTVに参画する「面白さ」や「醍醐味」は何でしょうか?

西條:あくまで私の持論ですが、ベンチャーキャピタリストとして成功したいのであれば、若いうちに圧倒的な「投資の場数(打席数)」を踏むべきです。

規模の大きいファンドや組織の階層が厚いVCでは、若手が入社してもあまり新規投資をできなかったり、上層部の判断で案件が通らなかったりすることがあります。入社して3年経っても新規投資の件数がゼロ、ということも起こり得ます。

しかし、キャピタリストとしての実績を作るには、「どれだけ良い投資をしたか」という結果が必要です。その確率を上げるためには、まずは数を打たなければなりません。

XTVの最大の特徴は、個人の投資予算や件数にキャップ(上限)を設けていないことです 。案件が良く、本人のやる気と能力があれば、極端な話、入社1ヶ月後でも投資ができます 。 投資をしてから結果が出るまで(M&AやIPO)には、早くても3-4年、通常は5-6年以上かかることが一般的です。

だからこそ、早い段階で打席に立ち、経験を積まなければ、5年後に「実績があります」と言える状態にはなりません。 ジャンルを問わず、フラットに機会が与えられ、自らの手で実績を作っていける環境は、野心ある方にとっては最高の土壌だと自負しています。


小学生が映画を作れる未来。AIによる「人間拡張」が、次の産業を創る

XTVの今後について、どのような展開を描いていますか?

西條: VCのファンドは「ヴィンテージ(醸造年)」のようなもので、その時代の環境や流行がポートフォリオに色濃く反映されます。 1号ファンド、2号ファンドがそれぞれの時代を映したように、これから組成される3号ファンドは、AIなどの新しいテーマの比率が高まり、全く異なる「味」に仕上がっていくでしょう。

もちろん、仮説を持ってポートフォリオを組みますが、投資期間の3〜4年の間にもトレンドは目まぐるしく変わります。そうした「予想できない変化」も含めて楽しみながら、最終的に60社程度の「いい感じ」のポートフォリオを組み上げていきたいですね 。

西條さん自身は、現在の「AIの波」をどう捉えていますか?

西條コンピュータが得意としてきた「繰り返し飽きずに実行すること」や「複雑な計算」に加え、AIによって新たに「データの強さ」を身につけた感覚を持っています。 既存のビジネスで言えば、例えばコールセンターのようなCS(顧客対応)領域は、音声であれテキストであれ、AIとの相性が非常に良く、間違いなく変革が進むでしょう。

ただ、私がより注目しているのは「人間とAIの役割分担」の変化と、そこから生まれる新しい産業です。 これからの人間の役割は、「こういうものがあったらいいんじゃないか」というディレクションや、出来上がったものに対して「これは良い、悪い」と判断することにシフトしていくはずです。

私は小学校の頃からプログラミングに熱中し始めましたが、そもそもなぜコンピュータやインターネットが好きなのかと言えば、根源的には「人間の能力が拡張されるから」なんです。

今、AIを使えば、絵を描く技術がなくてもイメージ通りの絵が出せますし、音楽も作れます。これまで才能や訓練が必要だった領域を、AIが拡張し、誰でも形にできる世界にしてくれる。例えば極端な話、小学生が一人で60分のアニメーション映画を作れる時代が来るかもしれません 。 AIに対して「このヒーローをもっと強くして」「ここで怪獣を復活させて」「やっぱり可愛い女の子を登場させよう」と対話をする。

そして「死んだと思ったら裏にラスボスがいた」なんていう展開を話すだけで、AIが毎回映像を生成してくれる。自分が納得いくまでそれを繰り返し、面白い作品を作り上げる 。これまで大きなアニメーションスタジオが優秀なスタッフと大資本で制作していたような仕事を、小学生がやってのけるかもしれないわけです。

既存業務の効率化だけでなく、こうした「人間拡張」によって爆発的にクリエイティビティが開放される未来には、大きな投資のチャンスがあると考えています。


熱量ある伴走者であれ。スタートアップへの「愛」が大事

最後に、XTVに興味を持っている方へメッセージをお願いします。

西條XTVは、投資領域が広く、誰にでも平等に投資の機会が開かれているファンドです。 私や手嶋のように、事業経営や新規事業の立ち上げを行ってきたパートナーの視点を間近で見ながら、起業家と同じ目線で議論ができる環境は、多くの学びがあるはずです。求める人物像としては、事業会社での経験がある方がフィットしやすいとは思いますが、金融出身の方でも全く問題ありません。

製造業や研究職など、多様なバックグラウンドを持つ方も歓迎です 。 何より大切なのは、スキルセット以上に「スタートアップのエコシステムや、そこにいる起業家たちが好きになれるか」という資質です 。

投資家としてドライに稼げばいいという姿勢ではなく、起業家へのリスペクトと愛を持って接することができる方。そして、自ら打席に立ち、キャピタリストとしてのキャリアを切り拓きたいという気概のある方からの応募をお待ちしています。

◼️募集要項:こちら

◼️カジュアル面談:西條(XにDMを)


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